女性の胸の痛み|乳腺関係の病気と症状を解説

女性特有の胸の痛み・乳房の痛みは、主に生理前や更年期におけるホルモンバランスの乱れが原因です。
特に、生理前は乳腺の厚みが増す影響で痛みを感じるものの、生理の終わりとともに和らぐ傾向にあります。
乳房に痛みを生じる状態、または病気として次のものがあげられます。
- 乳腺症
- 乳腺のう胞
- 乳腺線維腺腫
- 葉状腫瘍
- 乳管内乳頭腫
- 細菌性乳腺炎
- 乳輪下膿瘍
- 肉芽腫性乳腺炎
それぞれの病気と症状について解説します。
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①乳腺症 | 月経周期による乳房の張り
乳腺症は、胸の痛みや張りを伴う乳腺の良性変化で、女性ホルモンの変化で起こる自然な現象です。
主に30代〜50代によく見られ、病気というよりも生理的な変化として扱われます。
排卵期から生理前にかけて乳腺の細胞が活発になり、神経を圧迫してズキズキとした痛みが現れるのが特徴です。
生理が始まって数日経つとホルモンの刺激が減り、次第に症状は和らぎます。
片側の胸だけが痛む場合もありますが、基本的に特別な治療は必要ありません。
しかし、痛みが長期間続く場合や不安な場合は、乳腺外科の受診をおすすめします。
②乳腺のう胞 | 乳腺に水が溜まってしこりと痛みがある
乳腺のう胞は、乳腺の中に液体が溜まって袋状になり、局所的な痛みやしこりを引き起こす良性病変です。
水が溜まった袋が大きくなると胸に痛みを感じます。
痛みがひどい場合には、針を刺して内部の液体を抜く処置が行われます。
閉経を迎えると自然と症状が消えて治まる傾向にありますが、稀にのう胞の背景に腫瘍が隠れているケースや、のう胞内腫瘍との見極めが必要なケースがあるため注意が必要です。
③乳腺線維腺腫 | 20〜40代に多い良性の腫瘍
乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)は、主に20代〜40代の若い女性に発生しやすい良性の腫瘍です。
女性ホルモンの影響で生じると考えられており、生理前になると胸に痛みや腫れを伴うことがあります。
乳腺内に弾力のある滑らかな腫瘍が生じますが、通常は一定の大きさで安定します。閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が低下すると自然に小さくなる傾向にあるため、特別な治療は行わないことが一般的です。
ただし、腫瘍が3cmを超えて急激に大きくなる場合は、悪性の病気との鑑別が必要になります。
腫瘍が増大傾向にある場合や、悪性の腫瘍を否定できない場合は、外科手術による切除を検討することがあります。
④葉状腫瘍 | 稀にできる乳房の腫瘍
葉状腫瘍は、乳房の腫瘍全体で1%未満と非常に稀な腫瘍で、急激にしこりが大きくなる特徴があります。
中には2〜3ヶ月という短い期間で増大するケースがあり、胸に強い張りや痛み、違和感を覚えることがあります。
葉状腫瘍は組織学的に良性病変、境界病変、悪性病変の3つに分類され、まれに悪性の可能性があるため注意が必要です。
また、他の良性腫瘍との見極めや悪性の判断が難しいケースも少なくありません。
急激に腫瘍が成長し悪性が否定できない場合は、外科手術による摘出が検討されます。
⑤乳管内乳頭腫 | 乳頭から血液の混じった分泌物が出る
乳管内乳頭腫は良性の腫瘍で、乳頭から血液の混じった分泌物を認めることがあります。
主に30代〜50代の女性に多く見られ、乳管内に腫瘍ができることで症状が現れます。
必ずしも痛みを伴うわけではありませんが、炎症を伴ったり、腫瘍が大きくなったりすると痛みや張り感を覚えることがあります。
基本的には良性ですが、乳頭から血液の混じった分泌液が出る場合、乳がんが隠れているケースもあり注意が必要です。
悪性の病気と見分けるため、超音波検査や乳汁細胞診、針生検などの詳しい検査を受ける必要があります。
⑥細菌性乳腺炎 | 乳腺に炎症が起こってズキズキする痛みがある
細菌性乳腺炎は、主に授乳期、卒乳後数ヶ月の間に起こりやすい乳房の炎症です。
細菌性乳腺炎になる原因は、乳頭あるいは乳頭に近い毛穴から細菌が入ることです。
乳腺に炎症が生じることで、胸にズキズキとした強い痛みや腫れがあり、39度以上の高熱を引き起こす特徴があります。
細菌性乳腺炎の治療には適切な抗生剤投与、鎮痛剤が必要になります。膿が多量に溜まった場合は、針を刺して吸引したり、皮膚を切開して膿を排出する場合があります。
また、高熱は出なくても、乳房が腫れて痛む場合は「うっ滞性乳腺炎」が疑われます。(※うっ滞性乳腺炎でも発熱を伴うことはあります)
うっ滞性乳腺炎のしこり・痛みの症状を緩和させるためには、乳房のマッサージに加え、症状のある乳房から赤ちゃんに授乳することが有効です。
⑦乳輪下膿瘍 | 乳輪の周囲が腫れ上がって痛みを伴う乳腺炎
乳輪下膿瘍は、乳輪の下にある乳管が細菌感染し、周囲が硬く腫れ上がり、強い痛みを伴う病気です。
特に陥没乳頭の女性や、出産経験のない方、喫煙者に発症しやすい傾向があります。授乳期ではない20代〜40代の女性に多く見られますが、年齢に関わらず幅広い年代の女性に起こる可能性があります。
症状が悪化し内部に膿が溜まると、皮膚が変色し、微熱やだるさなどの全身症状が現れるケースも少なくありません。
治療には主に抗生物質を用いますが、症状が重い場合は切開して膿を排出する必要があります。
一時的に良くなっても再発を繰り返しやすく、しこりとして触れるため、乳がんとの鑑別も重要となってきます。
⑧肉芽腫性乳腺炎 | 30代〜50代に起こりやすい乳腺炎
肉芽腫性乳腺炎は、乳房の腫れや強い赤みを引き起こす良性の病気です。
主に30代〜50代の経産婦の方に多く見られ、授乳期や外傷など明確な原因が無いにも関わらず、炎症が起こることが特徴です。
初期は痛みが少なく硬さが目立つ程度ですが、進行すると急激に痛みや発赤を伴って、胸全体が腫れ上がります。
放置すると次第に皮膚表面に炎症がおよんでしこりが自壊し、皮膚から膿が出てくることがあります。
炎症が広がると、乳がんや他の感染症と症状・見た目が類似するため、画像診断だけでなく針生検などによる、詳しい組織検査が必要になります。
胸が痛いのは乳がん?
乳がんは痛みがないことがほとんど

胸・乳房の痛みの原因が、乳がんであることは多くありません。乳がんは痛みを伴わないことが多く、特に初期段階では自覚症状を感じにくい傾向にあります。
実際の乳がんでは、しこりや茶色い分泌物、皮膚のひきつれといった症状が現れる傾向にあります。
しかし、痛みがあるからといって、乳がんの可能性が否定されるわけではありません。痛みの有無だけで乳がんの可能性を判断することは困難です。
乳がんは早期発見・早期治療が予後や治療の選択肢に大きく影響するため、胸・乳房の痛みを感じた場合は、まずは乳腺外科へ相談しましょう。
また、定期的な乳がん検診を受けることも重要です。
乳房以外の胸の痛み
胸の痛みを感じる場所別! 右胸・左胸で考えられる原因と病気
乳房以外の胸の痛みとして、痛む場所で次のような病気・症状が考えられます。
ただし、痛みを感じる場所には個人差があり、左胸の疾患が右に響く(放散痛)ケースや、その逆もありますので、自己判断せず医療機関を受診してください。
| 痛む場所 | 考えられる病名・原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 左胸〜中央 | 狭心症 | 階段の上り下りなど体を動かした際に、胸が締め付けられる圧迫感がある。安静にすると数分で治まることが多いが、安静時や就寝中に起こるタイプもある |
| 心筋梗塞 | 激しい痛みが20分以上継続し、安静にしても回復しない。冷や汗や吐き気を伴う | |
| 心臓神経症 | 数時間から半日ほど痛みが続き、不安感や不眠を伴うことがある。ストレスが主な原因 | |
| うつ病 | 精神的なストレスや不安が引き金となり、身体的な異常がないにもかかわらず胸の痛み(心因性の痛み)を感じることがある | |
| 右胸 | 胆石症・胆のう炎 | 痛みの中心は右の肋骨下やみぞおちだが、右胸や右肩に痛みが響くことがある(放散痛)。脂っこい食事をとった後に症状が出やすく、吐き気や発熱を伴う場合もある |
| 左右どちらかの胸 | 肺炎 | 息を深く吸い込んだり咳をしたりしたタイミングで、チクチクとした痛みが強まる。発熱を伴い、黄色い痰が出ることもある |
| 気胸 | 肺に穴が開いて空気が漏れ出し、突然鋭い痛みと激しい息苦しさを感じる。女性の場合は生理周期に関連して起こる「月経随伴性気胸」が考えられる | |
| 胸膜炎 | 呼吸をするたびに背中から胸にかけて痛みが走る。息切れや動悸を引き起こす。咳や痰などの症状が起こる場合もある | |
| 肋間神経痛 | 背骨から肋骨にかけて痛みがあり、深呼吸や大きな声を出すことで症状が悪化する傾向にある |
胸の痛み方別!
痛み方で異なる原因と病気
乳房以外の胸の痛みとして、痛み方別で次のような病気・症状が考えられます。
ただし、痛みの感じ方には個人差がありますので、自己判断せずに医療機関を受診してください。
| 胸の痛み方 | 考えられる病名・原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| ズキズキとする痛み | 心膜炎 | 風邪を引いた後などに胸を刺すような痛みが現れる |
| 帯状疱疹 | 症状が進むと水疱が現れる。ウイルス感染が主な原因 | |
| 肋間神経痛 | 体をひねると症状が強まる。痛む場所を特定しやすい | |
| チクチクする痛み | 肋間神経痛 | 体をひねると症状が強まる。痛む場所を特定しやすい |
| 筋肉痛 | 表面的な痛みが数日続き、動かした際に痛みが強くなる | |
| 心膜炎 | 風邪を引いた後などに胸を刺すような痛みが現れる | |
| 胸膜炎 | チクチク、ズキズキとする痛み。深呼吸、咳、くしゃみで激しく痛む。発熱や悪寒を伴う | |
| 心臓神経症 | 数時間から半日ほど痛みが続き、不安感や不眠を伴うことがある。ストレスが主な原因 | |
| 咳をするときに痛む | 肺炎 | 咳をしたタイミングで痛みが増し、発熱などを伴う |
| 気管支炎 | 肺炎と同様、咳き込んだ際に痛みが強まる | |
| 肋骨骨折 | 安静時は鈍痛。咳や深呼吸で激しく痛む | |
| ビリビリ・ピリピリする痛み | 肋間神経痛 | 体をひねると症状が強まる。痛む場所を特定しやすい |
| 帯状疱疹 | 症状が進むと水疱が現れる。ウイルス感染が主な原因 | |
| 心臓神経症 | 数時間から半日ほど痛みが続き、不安感や不眠を伴うことがある。ストレスが主な原因 | |
| 締め付けるような圧迫感のある痛み | 狭心症 | 階段の上り下りなど体を動かした際に、胸が締め付けられる圧迫感がある。安静にすると数分で治まることが多いが、安静時や就寝中に起こるタイプもある |
| 心筋梗塞 | 激痛が20分以上続き、吐き気や冷や汗を伴う | |
| パニック障害 | 突然の強い不安感とともに、めまいや動悸などを引き起こす | |
| 引き裂かれるような鋭い痛み | 大動脈解離 | 胸から背中や腰へ向けて突然激しい痛みが走る |
| 張りのある痛み(乳房周辺の痛み) | 成長期 | 胸が突っ張るように痛む。乳頭がヒリヒリするケースもある |
| 生理前 | 女性ホルモンの変化により、胸に張りが生じる | |
| 妊娠 | 妊娠期のホルモンバランスの影響で胸が突っ張るように痛む | |
| 出産後(授乳期) | 授乳に向けた乳腺の発達や母乳の影響による痛み。張りを伴う |
乳房の痛みは受診すべき?
受診の目安
生理前や授乳期などホルモン変化による一時的な痛みであれば、過度に心配する必要はありません。
しかし、乳房の痛みが長期間続く場合や、しこり、血の混じった分泌物が出る場合は乳腺外科での検査が推奨されます。
また、原因がわからない強い胸の痛み、冷や汗・吐き気などを伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。
重大な病気が隠れている危険性もあるため、早めの受診が重要となります。
胸・乳房の痛みは
当院へご相談ください
胸の痛みが気になるときは、一人で悩まず早めに当院へご相談ください。
検査を受けることで、乳がんの有無や現在の状態を正しく把握できます。良性の疾患であっても治療や手術が必要なケースがあるため、自己判断は危険です。
受診される際は、痛みが始まった時期、どのようなときに痛みが強くなるかをメモしておくとスムーズに診察を進められます。
不安な気持ちを我慢せずに、まずは一度ご来院、ご相談ください。